不動産の売買や賃貸において、一般的に使われる用語として「嫌悪施設」という言葉があります。
多くの人が避けたいと考える「嫌悪施設」の近くは売買が成立しにくいので、地価が安くなっています。
「嫌悪施設」とは、決まった施設はなく、人それぞれの感覚により、とらえ方が違っているため、個人的感情に任せることができる言葉です。
<住宅地近辺における主な嫌悪施設>
現 象 | 施 設 |
騒音や振動の発生 | 高速道路等の主要道路、飛行場、鉄道、地下軌道、航空基地、大型車両出入りの物流施設 等 |
煤煙や臭気(悪臭)の発生 | 工場、下水道処理場、ごみ焼却場、養豚・養鶏場、火葬場 等 |
危険を感じさせる | ガスタンク、ガソリンスタンド、高圧線鉄塔、危険物取扱工場、危険物貯蔵施設、暴力団組事務所 等 |
心理的に忌避される | 墓地、刑務所、風俗店、葬儀場 等 |
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ラブホテル、パチンコ店なども嫌悪施設に入ります。
高額納税者の多いことで有名な、兵庫県芦屋市では、市内にパチンコ店やラブホテルをつくってはいけないという条例があります。
また、ネオンサインや屋上広告も禁止されているようです。
風紀への配慮で市のイメージを守ろうとする姿勢は徹底しています。
一方こんな、意外な嫌悪感も存在します。
近所に有名な神社があります。
敷地内は、緑豊かで野鳥や昆虫などが多種生息していて、街のランドマークでもあり、オアシス的存在です。心静まるパワースポットでもあります。
その神社の向かい側に、大手ライオンズマンションが建ち、当初はかなりの価格で販売されました。
駅まで徒歩圏内ということもあり、即日完売的な勢いでした。
ところが、数年で転出して行かれる方がチラホラ出るようになりました。
理由は何だと思いますか?
「せみの鳴き声」なんです。
夏の早朝、それはそれはジージーとうるさくて、騒音のレベルでは最高クラスだそうです。
残業などで、夜遅くに帰宅して、やっと熟睡した頃、早朝からせみに起こされたのではたまりません。
ストレスから開放されたくて、健康管理の面からも出て行かれるご家庭があるようです。
一般的に、高圧電線の近くというのも、不安があり、避けたいところです。
しかし、価格が同じ程度の建物だとすると、かなり安く買えることになり、
確かな検証結果がないなら、大丈夫だと購入される場合が多いそうです。
「せみの鳴き声」「高圧電線」これらは、人によって、嫌悪感が異なる例です。
大きな総合病院が近くにあると、便利で心強いと思いますが、新しく建設されるまでは、住民の反対運動が激しかった例を知っています。
救急車のサイレンが24時間聞こえるのは、たまったものじゃないと、近隣住民がプラカードを立てて反対していました。
社会の役に立つ病院でも、嫌悪施設になりえるということですね。
港区南青山に児童相談所建設計画がありましたが、周辺住民の反対が話題になりました。マスコミにも長い間取り上げられていました。
しかし、国が決めた計画を翻すことは難しいのかも知れません。
一つ一つ見ていくと、暴力団事務所以外は、何らかの存在意義のある施設ばかりなのかもしれませんね。